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ILMの誕生ジョージ・ルーカスは1975年に最初の「スター・ウォーズ」の制作を開始したとき、この映画の成功は、特撮シーンの出来栄えにかかっていることを十分承知していました。 しかしその当時、彼が思い描いていた高度な特撮を実現することのできるスタジオはどこにもありませんでした。 そこでルーカスとプロデューサーのゲイリー・カーツは、いちから自分たちの手で特撮スタジオをつくることにしたのです。 ロサンゼルスのヴァンナイスという場所にあった大きな倉庫を改造して社屋とし、「2001年宇宙の旅」の特撮で知られるダグラス・トランブルのもとで働いていたジョン・ダイクストラを特撮監督として雇いました。 そしてダイクストラのもと、デザイナー、カメラマン、模型製作者、電子技術者、美術大学の学生などが集まりILMはスタートしたのです。現在でILMはルーカス・デジタルという会社の一部門となっており、サンフランシスコ北のサンラファエルという場所にあります。 |
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画期的だった「スター・ウォーズ」の特撮「ウルトラマン」のような昔の特撮TV番組を見ていると、飛行中の戦闘機の背中に糸が見えることがあります。これはもちろん、戦闘機のミニチュアを糸で吊って撮影していたからです。「スター・ウォーズ」にもX-ウィングやタイファイターなどたくさんの宇宙船が登場しますが、これらも撮影中は糸で吊られているのでしょうか? 実は「スター・ウォーズ」の宇宙船のミニチュアたちは、しっかりとした棒に固定され、それ自体は決して動かされることはありません。ではどうやってそれらが飛んでいるところを撮影するのでしょう? 何とミニチュアではなく、撮影するカメラのほうが動いているのです。それも人が手で持って動かすのではなく、コンピュータ制御で動くロボットアームの先端に取り付けられたカメラで撮影します。 |
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▲反乱軍のクルーザーを撮影中のILMのスタッフ。ミニチュアが太い棒でしっかりと固定されてあるのがわかります。 |
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宇宙船と背景は別々に撮影され、後でひとつに合成されます。そのときに宇宙船を固定している棒も消されます。 たくさんの宇宙船が1ショットに登場するときは、基本的には1隻ずつバラバラにフィルムに収められ、後でひとつに合成されます。 このコンピュータ制御で動くミニチュア撮影用カメラは「モーション・コントロール・カメラ」と呼ばれ、「スター・ウォーズ」の特撮監督ジョン・ダイクストラ、および「帝国の逆襲」で特撮監督を務めることになるリチャード・エドランドらによって開発されました。一旦プログラムされた動きを、何度も寸分違わず再現することができ、現在でも特撮には欠かせない道具のひとつになっています。 「スター・ウォーズ」の、過去に例のないフレキシブルでスムーズな宇宙船の動きは、このモーション・コントロール・カメラの功績なのです。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲モーション・コントロール・カメラを開発したジョン・ダイクストラ(左)とリチャード・エドランド(右)。 |
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▲モーション・コントロール・カメラの動きをプログラムしている、ILMのデニス・ミューレン(左)。 モーション・コントロール・カメラを使ってデス・スターの表面を撮影しているリチャード・エドランド(右)。 |
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不可能を可能にしてきたILM「帝国の逆襲」は氷の惑星ホスを舞台に始まります。そしてその真っ白な雪原で、反乱軍のスノースピーダーと帝国軍のスノーウォーカーが熾烈な戦いを繰り広げます。もちろん猛スピードで飛び交うスノースピーダーは、ミニチュアを撮影して実写の背景に合成してあるのですが、実は真っ白い背景に何か別のものを合成するということは、特撮界ではタブーとされていたことなのです。 2つ以上の別々の映像をひとつに合成するとき、単純に重ねあわせると、ちょうど心霊写真のように、 前に重ねた映像をとおして後ろの映像が透けてしまうという現象がおこります。「新たな希望」のモンスター・チェスのシーンを思い出してください。モンスターたちの後ろにテーブルが透けてみえますよね。これが単純に2つの映像を重ねあわせた例で、この場合はモンスターたちはホログラムという設定ですので、背景が透けてもかまわなかったわけです。しかし背景が透けて見えると困るケースでは、透けを防ぐために、合成の際に”マスク”とか”マット”と呼ばれる第3の素材が使われます。マスクによって、背景の透けて見える部分を取り除き、その上から前景の映像が重ねられるのです。 しかしこの手法を用いる場合は、合成する前景とマスクの形がピッタリと合っていなければなりません。 もしお互いの形がちょっとでもずれると、合成されたもののふちに黒いラインが現れ、いかにも合成しましたというみっともない映像ができあがっていまいます。 実のところ、このマスクをピッタリと合わせるのは至難の技で、たくさんの合成を必要とするスペースバトルでは、幸いにも背景が黒い宇宙空間なので、アラをうまくごまかせていたのです。逆にホスの雪原は真っ白ですから、ちょっとでもマスクがずれると、すぐに黒いラインが見えてしまうことになります。このためにILMのスタッフは技術革新を重ねて、最高の精度で合成ができる設備を作り上げました。その結果、マスクのずれがない、見事な雪原戦闘シーンが完成したのです。 |
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画像合成の仕組み | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
▲スノースピーダー(左)を単純に背景(中)に合成すると、右図のように透けた絵になってしまいます。 |
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▲マスク素材(左)で背景をくりぬいて(中)から合成すると、右図のようにちゃんとした絵に仕上がります。 |
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▲しかしマスクと前景をぴったり合わせるのは難しく、お互いがずれてしまうと、明るい背景では左図のように輪郭に黒い線があらわれます。右図は同じようにマスクと前景がずれていますが、背景が暗いため、うまくごまかせています。 |
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躍進するコンピュータ・グラフィックス(CG)ジョージ・ルーカスは早くからCGを映画の特撮に利用できないかを模索していました。「スター・ウォーズ」旧三部作を制作していたころは、まだCGの表現力は乏しく、作るのに莫大なコストがかかっていたため、実際に目立った形で映画に使われることはありませんでした。それでもいつか現実に使うことができるよう、CG部門を設立し、研究開発を続けていました。 実はそのCG部門が、後に「トイ・ストーリー」や「バグズライフ」などのCG映画を生み出したPIXAR社となるのです。PIXARは今では完全にルーカスのもとから離れてしまいましたが、その研究成果はCG業界に多大な功績を残し、その後ILMで手掛けることとなる「アビス」「ターミネーター2」「ジュラシック・パーク」などの、CG技術をフルに活用した映画へとつながっていきます。 CGには、実写撮影の際に障害となるような物理的制約がないため、制作者がイメージしたそのままの映像をつくることが可能になりました。 「ターミネーター2」や「ジュラシック・パーク」以降飛躍的に進歩したCG技術は、従来の伝統的な特撮技法を駆逐しつつあります。 |
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「スター・ウォーズ」最新作「ファントム・メナス」では、それまでミニチュアを作って撮影されていた宇宙船などの多くはCGで作られました。たとえば息を呑むスピード感のポッドレースのシーンでは、ポッドレーサー、背景、爆発、煙など、ほとんどの要素がCGで作られています。また、ジャージャー・ビンクスなどのクリーチャーも、昔は人がぬいぐるみを着たり、機械仕掛けで動かされていましたが、今回は多くのものがCGで作られています。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
これまでにILMが特撮を手掛けた主な映画リスト
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