世界的なスター・ウォーズ氷河期(?)だった90年代前半のまっただ中にリリースされた旧3部作の4枚組ボックスセット。これをCD屋で見つけた時には泣いたね。昔なくした宝物がタンスの裏から出てきた時の感動っていえばいィんスかね?各曲解説 などで構成された60ページ以上あるオリジナルブックレットに加え、日本盤には、その全邦訳と大林宣彦監督のコラムなどが別冊形式で付いておりとても丁寧な商品でした。全75曲中32曲が初収録曲という点も、公開当時のレコードしか持っていなかったファンにとって嬉しいパッケージ内容でした。『特別篇』で差し替えになってしまったマックス・レボ楽団の「ラプティ・ネック」そして「イォーク・セレブレーション」(映画バージョン)などは、もはやCDではこのボックスでないと聞く事ができません。
『特別篇』のサウンドトラックは、初回プレスのみ厚手のブックレット付き紙パッケージで発売されました。普及版は普通のプラスチックケース仕様となりジャケットデザインも変更されています。が収録内容は変わりません。この特別篇サントラ盤の画期的だった所は、全てが映画と同じ(に近い)という点でした。 たとえばオープニングタイトル。スター・ウォーズのオープニングタイトルはどれも序曲的な要素を含んで書かれています。映画では最後まで使われずに途中で次の曲(ANHなら「ブロッケード・ランナー」)につながれる形で使用されています。この『特別篇』サントラシリーズは、この「映画での使われ方」に忠実に収録しているのです。とはいえ、「レイアのテーマ」「ヨーダのテーマ」「帝国のマーチ」などの有名な曲は、それぞれ独立したコンサートバージョンも編曲されていて、こういった曲もフルスコアで収録されています。 この特別篇バージョンが好きか、オリジナルサントラ盤が好きかは、好みが別れるところですが、映画の雰囲気を楽しむにはお薦めのシリーズです。
6曲の初収録曲と未発表テイク数曲を含む点も嬉しかったですが、このサントラの醍醐味は何といっても9分以上ある「ヤヴィンの戦い」でしょう。あのデス・スターとの最後の戦いのシーンがまるまる一曲として収録されているのは興奮意外の何モノでもありません。 ちなみに僕はコレを聞きながら関越道を走ってて、興奮のあまりスピード出しすぎて覆面パトカーにつかまりました。みなさん注意しましょう。 全体的にワーグナーやホルストのような、金管楽器のアンサンブルをフルに活用した勇ましさと、弦楽器のデリケートなフレーズが融合したとてもバランスのよい作品となっています。 もし、一枚だけスター・ウォーズのアルバムを買うというなら、迷わずこれをお薦めします。オンマイク(楽器の間近に置かれるマイク)で録られている音が多いため、コントラバスの弦が弓にこすられる質感であったり、金管楽器が吹ききっている時の管がビリビリとふるえている様な感触が伝わってくる点も、『帝国の逆襲』以降のサントラとは違った醍醐味があります。 ボーナストラックとしてメインタイトルのオリジナル未使用テイクが5本入っています。メインタイトルはこれらの複数のテイクから部分的にいいところを取り出し、編集することによって完成されたものなのです。どのフレーズがどのテイクから抜き取られたのかを聞き比べてみるのも楽しいかもしれません。
9曲の未収録曲(もしくは一部未収録曲)を含む2枚組のトータルタイムは、124分35秒にわたります。ジョン・ウィリアムスが、スター・ウォーズの作曲をする中で各キャラクターにテーマを与えたライトモチーフ作曲法を採用している事は有名ですが、三部作を通してもっともテーマ曲が豊かで明快なのがこの『帝国の逆襲』です。 有名な「帝国のマーチ(ダース・ヴェイダーのテーマ)」や「ヨーダのテーマ」をはじめ、「ハンとレイアのテーマ」など一作目で出てきたテーマをさらに展開した美しいメロディーもうまれました。また、全体的にも「アステロイド・フィールド」「ランドの城」「マイノックと宇宙ナメクジ」「スター・デストロイヤー攻撃」などメロディックなフレーズが多い事も特徴です。 また、「フォースのテーマ」から「ハンとレイアのテーマ」へと展開する『帝国の逆襲』のエンドタイトル曲は、スター・ウォーズ全作のエンディング曲の中で一番好き、というファンも多い名曲で、「音楽に酔いしれるアルバム」という意味ではお薦めのアルバムです。
旧三部作の最後を飾るこのアルバムは、「ジャバ・ザ・ハット」「皇帝のテーマ」「ルークとレイアのテーマ」「イウォークのテーマ」など新しいライトモチーフ・テーマも生まれましたが、全体的には、一作目がワーグナーやホルスト的であった事から比べると、ダイナミックな質感は薄れ、いわゆる映画音楽的なおもむきが色濃くなっています。 特別篇によって新しく追加された曲は、ジャバの城のバンド曲と、エンディングです。前者には、ある意味お遊び的な意味合いもあっての事ですが、後者はこれからのプリークェル(新三部作)との流れを汲むために差し替えられたものです。 以前のエンディングタイトル「イウォーク・セレブレション」に比べると、特別篇のエンディングは、「コンドルは飛んで行く」のような南米民謡趣向の曲になっています。オリジナル盤の『ジェダイの復讐』を聴き慣れた人なら、だれでもが違和感を感じるはずなのですが、映画を見ている分にはとても自然であり、この「勝利のセレブレーション」も何も抵抗なく流れていました。旧作になれている方でも、先入観なく聴けば楽しめると思います。